米国大学へのスポーツ奨学金留学


プロの世界(テニスの例)

スポーツをする上でプロを目指すことは大きなモチベーションとなりますが、プロになれたとしても高校卒業後すぐプロになるべきなのか、大学卒業後にプロになるべきなのかをよく考える必要はあるでしょう。

 

テニスを例にとるとフェデラーの年収が70億円である一方でITFに登録する"プロ"の約45%が年間で1円も稼いでいない現実があります。


 

アガシ、シャラポワ、錦織などトップアスリートを多く輩出し男女ともにITFジュニアの1位選手が所属するIMGアカデミー(高校)でさえ卒業後すぐプロになるのは1-2%、残りの98%以上は大学へ進学します。前述の通りプロになれてもそれで賞金が稼げるか、生活が成り立つかは全く別の話だからです。

 

USTA/ITFの調査結果によると、トップ100以内に入る選手はプロ転向後、平均3-4年でそれを達成。そしてトップ20、トップ200のいずれも平均年齢は26歳。またプロ転向の年齢にかかわらずプロとしてのキャリア年数は平均で7年間。それであれば設備や待遇面で圧倒的に有利なアメリカの大学でトレーニングを積み卒業後にプロ転向しても遅くはないはずです。アメリカの大学、スタンフォードやUCLAを筆頭としたNCAA所属の名門大学を卒業するチャンスさえあるということは、将来プロ以外のキャリアを選択する99%の人に大きなリスクヘッジとなるはずです。

NCAAとは

NCAAとはThe National Collegiate Athletic Association (全米大学体育協会)の略で、入場料やテレビ放映権料、グッズ販売などを一元管理し、そこで得る膨大な資金と各大学への影響力を持っています。NCAAはディビジョンがI, II, IIIと別れており、1,100の加盟大学、24のスポーツ、19,500チームに所属する学生アスリート数は合計で約50万人と膨大で、各大学公式チームはこの中で90もの選手権を争うこととなります。高校を卒業後にNCAAの学生アスリートになる割合はテニスで男女共約5%。野球は7%、サッカーは男子6%、女子7%、バスケは男子3%、女子4%。ゴルフでは男子6%、女子7% etc. と狭き門となっています。


NCAAのディビジョン I, IIでは15万人の学生アスリートに毎年27億ドル(約3000億円)もの奨学金を分配して支給(返済不要)しています。多くのディビジョンIカレッジではチーム所属メンバーに授業料はもちろん寮滞在費、食費、(個人タイトルでも)遠征費、用具からお小遣いまで給付しその総額は4年間で一人当たり2,000万円に達することも珍しくありません。万が一怪我をした場合にもその奨学金は一定条件のもと継続されることが一般的です。ただし当然のこと全米はもとより世界中からその奨学金を狙ってアスリートが競合する事となるため、それ相応の実力が必要となります。テニスの場合、基準は各大学コーチの判断によりますが、日本から挑戦する場合はITFランキングを筆頭に、UTRのレーティング、日本国内のランキングとビデオなどにより総合的に判断されることとなります。

 

上記以外に日本の大学スポーツと大きく違う点として、文武両道を追求するNCAAには様々なルールがあり、シーズン中は1日4時間、週20時間を超えるトレーニングを禁止しています。試合は長さにかかわらず3時間とカウントされます。ウェイト等はもちろんコーチ主導のミーティングもカウントに入ります。週2日はオフを作ることも必須とされています。またオフシーズンのトレーニングは週8時間まで、ただしコーチへのレポートを伴わない自主練はノーカウントです。これは学業面で一般の学生と比較して大きなハンディキャップを負わないよう考慮されているためで、つまり同時に学業面での成果も求められることとなり高度なタイムマネジメントスキルが養われることとなります。具体的には2年目までは卒業に必要なGPA(評定平均)の90%以上をキープすること、3年目までは95%、4年目まで以降は100%以上。それに満たない場合は原則試合への出場が禁止となります。

 

したがってNCAAで活動するということはトレーニングを積みプロへの可能性を模索しながらも、英語のコミュニケーションやライフスキルはもちろん、大学生の本分である学業面との両立で自分の価値を最大限に高め、生計を立てられるプロになれなかった場合にも将来のキャリアにおいて強力なセーフネットになり得ます。しかも総額で2,000万円以上にもなり得る費用が学生アスリートとして入学ー卒業することで全額が、あるいはそれに近いレベルで免除されることは日本ではまず考えられないこの上ないメリットと言えるでしょう。

NCAAは雲の上?

競技種目にもよりますが、日本の大学選手権等と比較した場合、必ずしもそうではありません。陸上男子100m決勝のタイムを例にとると、以下のような比較ができます。

 

  第86回日本学生陸上競技対校選手権大会 2018 NCAA Men’s Championship
1位 9.98 10.13
2位 10.07 10.17
3位 10.31 10.19
4位 10.32 10.27
5位 10.36 10.33
6位 10.36 10.36
7位 10.41 10.37
8位 10.51 10.41

NCAAディビジョン比較

NCAAリクルーティングファクト(2016年7月現在)

 

  ディビジョン1 ディビジョン2 ディビジョン3
所属大学数 346 307 439
学生アスリート数 176,000 118,800 187,800
平均学生数(学部) 9,205 2,530 1,860
スポーツ奨学金受給率 56% 61% 82%
学生アスリート卒業率 83% 71% 87%
学生アスリート率 4% 10% 26%

テニスチームを持つカレッジ数

 

  男子 女子
NCAAディビジョン1 263 320
NCAAディビジョン2 161 212
NCAディビジョン3 314 361
NAIA 92 110
NJCAA 120 141
合計 950 1144

NCAA登録条件:

ディビジョン1 登録条件

以下は主な参加条件です。

  • 高校卒業(高卒認定はNG)
  • 16主要科目の履修
  • GPA 2.3以上(日本評定平均-1)
  • SAT 400以上(Math, Reading), ACT 37以上(Sum)
  • TOEFL(カレッジにより異なる)
*GPA-SATは以下スライディングスケールで判断

 

 GPA SAT ACT
3.55以上 400 37
3.2 540 47
3.0 620 52
2.8 700 57
2.4 860 71
ディビジョン2 登録条件

以下は主な参加条件です。

  • 高校卒業(高卒認定はNG)
  • 16主要科目の履修
  • GPA 2.2以上(日本の評定平均-1)
  • SAT 400以上(Math, Reading), ACT 37以上(Sum)
  • TOEFL(カレッジにより異なる)
*GPA-SATは以下スライディングスケールで判断

 

 GPA SAT ACT
3.2以上 400 37
3.0 580 46
2.8 690 50
2.5 810 59
2.2 920 70

ディビジョン3 登録条件

各学校の規定による。このディビジョンでは「アスレチック(スポーツ)」としての奨学金は支給されないが、結果として75%の学生アスリートが奨学金を受け取っている。

NAIA - National Association of Intercollegiate Athletics

NCAAとは別の体育協会で250のカレッジが加盟し65,000人の学生が競う。

NAIA 登録条件

以下は主な参加条件です。

  • SAT 860以上またはACT 16以上
  • GPA2.0以上
  • 学年の上位50%以上
上記3つのうちの2つをクリアしていること(留学生でありこれまでに他の大学等に在籍していない場合)。

日本国内大学進学と比較した場合のアドバンテージ

  • 圧倒的な設備とトレーニング環境
  • 授業料のみならず生活費から道具、遠征費、小遣いにいたるまでの手厚い奨学金支給の可能性
  • 世界的な名門大学での学位取得の可能性
  • 実践的な英語コミュニケーションスキルの獲得
  • 異文化理解やリーダーシップなどヒューマンスキルの獲得
  • 国際的な評価やランキングポイント獲得のしやすさ
  • グローバルな人的ネットワークの構築
  • 理不尽な上下関係と非科学的な根性論からの脱却

アメリカの大学進学の場合はまず言葉や文化の壁を乗り越える必要があり、また常に成績というプレッシャーを受けながらプレーすることになります。この点では日本国内の大学進学に比べてより大変ではあるものの、逆に言えば言葉や文化の違いを乗り越えプレッシャーへの対応やタイムマネジメントといった社会人として非常に重要なスキルを自然と身につけることができることとなり、プロスポーツ選手になるならないに関わらずキャリアで成功を手に入れられる可能性を大きく高められるでしょう。