NCAAのディビジョン I, IIでは15万人の学生アスリートに毎年27億ドル(約3,800億円)もの奨学金を分配しています。多くのディビジョンIカレッジではチーム所属メンバーに授業料はもちろん寮滞在費、食費、遠征費、用具から小遣いまで給付しその総額は4年間で一人当たり2,000-3,000万円に達することも珍しくありません。万が一怪我をした場合にもその奨学金は一定条件のもと継続されるのが一般的です。ただし当然のこと全米はもとより世界中の学生アスリートと競合する事となるため、それ相応の実力が必要となります。テニスの場合、基準は各大学コーチの判断によりますが、日本から挑戦する場合は多くの場合ITF、UTR、日本国内ランキングとビデオなどにより総合的に判断されることとなります。
ディビジョン1 | ディビジョン2 | ディビジョン3 | |
所属大学数 | 350 | 310 | 438 |
学生アスリート数 | 176,000 | 118,800 | 187,800 |
平均学生数(学部) | 8,960 | 2,428 | 1,740 |
奨学金受給率 | 56% | 61% | 82% |
学生アスリート卒業率 | 83% | 71% | 87% |
学生アスリート率 | 4% | 10% | 26% |
NCAA - Our Three Divisions(2021年2月現在)
文武両道を追求するNCAAには様々なルールがあり、シーズン中は1日4時間、週20時間を超えるトレーニングを禁止しています。試合は長さにかかわらず3時間とカウントします。ウェイト等はもちろんコーチ主導のミーティングもカウントに入り週2日はオフを作ることも必須です。またオフシーズンのトレーニングは週8時間まで、ただしコーチへのレポートを伴わない自主練はノーカウントです。これは学業面で一般の学生と比較して大きなハンディキャップを負わないよう考慮されているためで、つまり同時に学業面での成果も求められることとなり高度なタイムマネジメントスキルが養われます。具体的には2年目までは卒業に必要なGPA(評定平均)の90%以上をキープすること、3年目までは95%、4年目まで以降は100%以上。それに満たない場合は原則試合への出場が禁止となります。
したがってNCAAで活動するということはトレーニングを積みながらプロへの可能性を模索しながらも、英語のコミュニケーションやライフスキルはもちろん、大学生の本分である学業面との両立で自分の価値を最大限に高め、生計を立てられるプロになれなかった場合にも将来のキャリアにおいて強力なセーフネットになり得ます。しかも総額で3,000万円以上にもなり得る費用が学生アスリートとして入学ー卒業することで全額、あるいはそれに近いレベルで支給されることは日本ではまず考えられないアメリカ留学のこの上ないメリットと言えるでしょう。
競技種目にもよりますが、日本の大学選手権等と比較した場合、必ずしもNCAAは雲の上の話ではありません。陸上の男子100m決勝のタイムを例にとると、以下のような比較となります。むしろ1位、2位は日本の記録が上回っており、それ以外もほぼ互角と言えるのではないでしょうか。これはほんの一部の比較でしかなく陸上競技や他のスポーツ全体のレベルを表している訳ではありませんが、日本で良い記録や経歴を持っている学生はアメリカでもそれなりの評価が得られる可能性があることになります。一度自分の競技におけるアメリカの記録や、対戦スポーツであれば世界ランキングの日本の選手との立ち位置の違いなどを調べてみる価値はあるでしょう。
第86回日本学生陸上競技対校選手権大会 | 2018 NCAA Men’s Championship | |
1位 | 9.98 | 10.13 |
2位 | 10.07 | 10.17 |
3位 | 10.31 | 10.19 |
4位 | 10.32 | 10.27 |
5位 | 10.36 | 10.33 |
6位 | 10.36 | 10.36 |
7位 | 10.41 | 10.37 |
8位 | 10.51 | 10.41 |
男子 | 女子 | |
NCAAディビジョン1 | 263 | 320 |
NCAAディビジョン2 | 161 | 212 |
NCAディビジョン3 | 314 | 361 |
NAIA | 92 | 110 |
NJCAA | 120 | 141 |
合計 | 950 | 1144 |
以下は主な参加条件。
以下は主な参加条件。
各学校の規定による。このディビジョンでは「アスレチック(スポーツ)」としての奨学金は支給されないが、結果として75%の学生アスリートが奨学金を受け取っている。